そして、結婚相談所に入会する
結婚相談所に初めて話を聞きに行ったのは、36歳の夏だった。しかしその時はすぐに入らなかった。なぜならば、私は海外で働きたいからだ。
結婚をして、旦那さんと長くこころのつながりを持つことには心底憧れる。けれども、結婚をすると仕事をセーブしたり夢を諦めることを遠回しにでも強要される気がしていた。
特に、私の母は女は家庭に入って子供を産むのが一番幸せだと信じて疑わないし、そうしないことは世間様の前で恥ずかしいことだと思っている。その母と同世代で、同じような考えの人が相手の男性のバックにもついているのではないかと思うと、身動きが取れない。
したがって、結婚相談所にお金を使うよりも、語学の習得の方にお金を使いたいと思ったし、もしかしたら海外に住んでから相手を探したほうがよほど現実的ではないかと思った。
しかし、2018年の12月中旬、私の心境は大きく変わった。
私は仕事に対しても将来不安を抱えていて、今のポジションには先がないと思っているなかで何年ももがいてきた。そんなおり、上司から2019年度の課の人事の見通しが上がり、そこに私の進展はないことを確認し、がっかりした気持ちになった。残念ながら、仕事に対するモチベーションを全て失ってしまった。
2019年1月。さらに先三年の予算案が出た。その予算案の人員補充計画において、私にとって不利益になる内容があった。それで私は、上司は私を昇格させることについて前向きではないのだと悟った。
課長は口頭では、すごく評価している、今の評価は私の範囲ではなく部長が決めたもの、2020年にあなたを昇進させたいという思いがあるなどとほのめかす。しかし、必ず但し書きをつけ、決算次第であるし、空き次第であるし、人事制度によるという。
課長は嘘をつくタイプではないから、本当にそう思ってくれている部分もあると思う。しかし、実質人事権はなく、なるべくならば昇進しないまま今の仕事をしてくれたほうが安い予算で済むからいいはずで、課長にとって優先必須課題ではないはずだ。それは、やむを得ない。私がそれでもなお魅力的ならば、望む結果は得られるはずだ。自分はそこまで至らないということだ。
それを思うと、子供を産む能力を失う年齢まで仕事人間でい続けたとしても、生活にゆとりができるわけでもなく、私の仕事に対する片思いが続くだけだと思った。むしろ今後はさらに孤独感と疲労感だけが増して、たった1人でアパートに帰るだけだと感じた。それが耐え難いもののように感じられた。
だから私は、一刻も早く環境を変えようと決意し、転職サイトに登録し、転職エージェントとのミーティングをもち、通信制の海外大学院に申し込み、結婚相談所に申し込んだのだった。見栄を張っている場合ではないし、これがダメなら次はあれというふうに順序立てている場合でもない。
入会の決め手は、海外で仕事をしたいからといって結婚をあきらめなくていいと、カウンセラーが言ってくれたからだ。
女性のキャリアを応援しないタイプも一定量いるが、そういう人々はまず37歳の女性を最初から対象外にする、と。逆に37歳もオーケーという男性にとってはそこは重要じゃない、と。
そして、はっきりとしたことが決まっていないならば、まずは動いてみる、やってみようと思う時が、あなたにとって最も適切なタイミングなのだと。