死にたい人を突き放す勇気
私は中高生の頃、死にたいという思いが乱高下することがあって、結構そのエネルギーを持て余した。
私の母は徹底して突き放した。
実際私は何度か自殺を試みたこともあるが、結局ただギリギリで死への恐怖におののいただけだ。家の中で自傷行為に走っただけでなく、家出をして100kmくらい離れた県まで行って死のうかと思ってさまよったこともある。
しかし私は死におののき疲労感と資金が途絶えて帰宅した。携帯のない時代で、後で聞いたところによると、父や姉はかなり心配して眠れなかったそうだが、母はいつもと変わらずなんのコメントもせず普通に過ごしていたらしい。
私は母ととことん折り合いが悪かったし、今も良くはない。しかし、少しくらいは心配してくれるのではないかと、どんなにキツく当たられてもどこかで期待していたのだと思う。
でも期待は外れた。
血が噴き出したら救急車を呼ぶくらいのことはしてくれると思うが、ちょっとやそっとでおどおどする人間ではないようだ。なんなら、頭切って血が出たってたぶんビビらない(経験あり)。思い返せば、実の母が亡くなったとて海外旅行をキャンセルしない人間である。
私は、昨日あの人を突き放したことをまだ気にしている。不慣れな土地で寒い中悩んで首を吊ったりしていたらどうしよう。自分の責任になるのが怖いのではない。私は彼が泣いていたら、柔らかい布で包んであげるくらいはしてあげられると思うのだ。でも、そういう態度が彼を勘違いさせ、謎のロジックで彼自身を苦しめてきたのかもしれないのだから、仕方ない。